しづのなみだみず
■ 志津の涙水
犬鳴山に伝わる恋物語です。
《平安のころ、宮中に仕える小聖という若い僧と、彼に思いを寄せる志津という女宮がいました。ある日、小聖の部屋に志津が花を飾ってくれたので、お礼の歌を志津に送りました。志津は返歌として自分の恋心を綴った歌を送りました。小聖は仏教の真理を探求する身、色恋に興じるわけにもいかず、宮中を去り犬鳴山にある七宝滝寺にこもりました。それを知った志津もまた犬鳴山に入りました。しかし志津が七宝滝寺につく前にどこからか現われた白雲が小聖を隠してしまい姿がわからなくなってしまいました。これに悲嘆した志津は、路傍でそのまま息をひきとりました。志津の瞳からは、恋してはならぬ人に恋をした哀しみの涙があふれ出て止まりませんでした。その涙は山肌にしみ入り泉となりました。今もその涙のしずくは清らかにしたたり落ちているといいます。》
人々は志津を哀れんで墓を立てましたが、この墓に雲がかかれば必ず雨が降るといいます。そしてこの雨は志津の涙雨と呼ばれています。
(出典:『泉佐野何でも百科』 泉佐野市役所 1994年 110ページ)