うしがみ
■ 牛神
農家が飼育する牛の無事息災を祈願してまつられた民間信仰の神。牛神さんと呼ばれ親しまれています。泉南地域で農業を営むほとんどの集落で牛神がまつられています。耕運機が普及する昭和40年代に入るまで、たいていの農家はめすの子牛を飼育し、農耕に使用すると同時に役牛として調教して博労(ばくろう)を通じて転売しました。この転売で得る収入は「おい金」と呼び、農家の貴重な現金収入でした。飼育がさかんな時代には、泉南地域の地場産業ともいえるもので、貝塚市の牛市場では1日に1千頭の牛が取引されたほどでした。このため農家は飼育する子牛を大事に育て、牛の無事息災を祈願する祭りを行いました。旧暦7月7日(新暦では8月7日)七夕に早朝から牛を川や水路、池で泳がせたあと牛神さんに連れてきて祈願したり、午後からは村中の人が牛神さんの神前の広場に集合して牛神座をもよおして会食して過ごしました。今日でも上之郷や日根野の一部の集落で、牛神祭りが行われています。全国的にも泉南地域に固有の民間信仰だと考えられています。牛神さんとの直接の関係はわかりませんが、1316(正和5)年の日根荘日根野村絵図には「牛神松」が記されていますし、16世紀になると、瓦屋の土地売買証文には「牛神」の地名がたくさんでてきますから、この信仰はかなり古いものと考えられます。
(出典:『泉佐野何でも百科』 泉佐野市役所 1994年 23ページ)