おこまぎつね
■ お駒狐
市場の妙光寺に住んでいたという、白い女狐の話です。
《むかしむかしのこと。市場の妙光寺に白い女狐が住んでいました。若い姿の美しい女狐だったので、その名を「みょうこじ小女郎」。だれともなく「こじょろ」「こじょろ」と呼んでいました。若い衆が一杯きげんで夜遊びからの帰り、妙光寺わきの暗い淋(さび)しい道を歩いていると先の方が不意に明るくなり若い美しい娘が現われました。娘はふわりと寺の塀の上に座り、糸車に糸をかけ回しはじめます。若者はこの娘が何処のだれかを思い出そうとしても思い出せず、ただその美しさに胸が高鳴るばかり。すれ違いざまに娘はにこりと笑うのですが、若者はなぜか声をかけることも、振り返ることもできませんでした。しばらくすると若者は背筋のゾーッとするのを感じました。「こじょろ」が出たというのがはっきりとわかったのです。しかしその美しさを忘れることもできず、恐さと胸の高鳴を抱えたまま、若者は走って逃げていきました。》
(出典:『泉佐野何でも百科』 泉佐野市役所 1994年 40ページ)