泉佐野市立図書館
いずみさのなんでも百科
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なかやたろうでんしょう

■ 中屋太郎伝承

上之郷と日根野に伝わる江戸時代初期の犠牲伝承。その伝承は次のとおりです。当時上之郷と日根野の間は境界がはっきりしなくなって、その境界をめぐって対立していました(一説には水争いとも伝えられています)が、佐野の庄屋さんが間に入って別所谷をもって境とすると協定が成立しました。しかし、その和解ができた日に日根野村の人が上之郷山にいたために、上之郷側によって殺害されました。これに怒った日根野側は殺害に相当する犠牲を要求し、上之郷側は村人の代わりに中屋太郎を身代りとして差出すことになり、日根野の庄屋さんの所へ行かせました。しかし、庄屋さんの奥さんに「殺されることはない、逃げなさい」とさとされ、太郎は上之郷中村の藪のなかにある井戸にひそみましたが、結局発見されて殺されました。現在も中村のたんぼのなかに、慶長13年と刻まれた中屋太郎の五輪塔が立っています。古文書や絵図によって、中屋太郎が犠牲となったという近世初頭に別所谷に築かれた溜池の所属をめぐって、上之郷と日根野の境界訴訟が起こり、同年12月片桐且元の裁定によって解決したことが、史実として明らかなことになっています。また、中屋太郎のご子孫がいまもつづき、太郎の犠牲に対する村の補償が今日までつづいていることなど、中屋太郎の伝承は伝説の域を越えた史実の一面を伝えていることでも注目すべき伝承といえます。
(出典:『泉佐野何でも百科』  泉佐野市役所  1994年  161ページ)