たばこのひ
■ たばこの火
江戸時代の佐野の豪商食野家を題材にした上方落語の古典名作の一つ。昔、大坂の北の新地にあるお茶屋(綿富)で、次から次へと丁場にお金を立て替えさせ、芸者やたいこ持ちに大判ふるまいする上品な老人が遊んでいました。この老人こそ今をときめく和泉の佐野の豪商食野のお大尽。そうとは知らぬお茶屋は、立て替えのお金が余りに高額になったので、とうとう立て替えを断りました。これに気分を害した檀那は立て替えたお金をみな倍にして返し店を出て行き、鴻池の本宅に帰っていきました。後になってこの老人が食野の檀那とわかったお茶屋は、どうにか機嫌を直してもらってまた遊んでもらおうとあの手この手を使います。ようやく檀那からまた店に寄るという返事をもらい、お茶屋は今日か明日かと待ちわびていました。ある日檀那がお茶屋に現れ「貸してもらいたい物がある」といったので、待ってましたとばかりに「いくら用立てましょうか」というと、檀那は「いや、ちょっとたばこの火が借りたい」というのがこの話のオチになっています。
(出典:『泉佐野何でも百科』 泉佐野市役所 1994年 139ページ)