まぜのじいさん
■ 馬瀬のじいさん
昔、大木村の馬瀬に住んでいた大男で力持ちの話です。
《まぜは、犬鳴のお不動さんの申し子といわれるほどの力持ちで、おまけにお人好しでした。ある日、隣村へ行く道が不便だと村人がいうのを聞くと、朝飯までの一仕事といって、かまどの火掻き(ひかき)で土砂をみるみるかきとって峠を開きました。これが今もまぜ峠と呼ばれている峠です。
またある時には、大水が出た樫井川で紀州の荒五郎という若者と力比べをしました。ごーごーと音をたてる川に入り、二人は「うおーっ」と掛け声をだして、大きな戸を水の中に立てました。
「これはまあ……どえらい力じゃ」
見物人は我を忘れてため息をついています。荒五郎は一歩も前に行けませんでしたが、なんとまぜは両手で大戸をおさえ、のっしのっしと1丁2丁も川上に向いて歩いて行ったそうです。》
(出典:『泉佐野何でも百科』 泉佐野市役所 1994年 202ページ)